おとうさん子 

「もっと、みるきぃのために残しておいてやりたかったんだけど」

8年前の、お盆休みで実家へ向かう車の中で
独り言のように呟いた
その言葉の意味が、よく分からなかった。
その裏に隠されていた
ほんとうの言葉の意味に気付けなかった。
ただ、初めて、弱さを垣間見た気がして
胸がきゅっとなったことを憶えている。
痛いような息苦しいような
そんな思いで、泣きたくなったのを憶えている。

そのとき、おとうさんは
もう知っていたんだね。
残された時間が、それほど長くないということを。
病院の先生から聞いていたその悲しい宣告を
ひとり、胸の中にしまっていたんだね。

やっぱり、強いよ。
叫びもせず、弱音も吐かず
家族の誰にも悟られないようにするだなんて。

何にも残してくれなくっていいんだ。
生きててくれれば、それでよかったんだ。
ただ、そばにいてくれるだけで・・・。

そうやって、にこやかに笑う写真のおとうさんに向かって
語りかけるようになって、もう8年になる。
ふいに、おとうさんに会いたくなって泣きたくなる気持ちは
今でも変わらない。
きっと、この感情は
何十年経っても、消えることはない。

私、こんなにおとうさん子だったかな。
いなくなってから、気付いたよ。

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